XJapanの元プロデューサー津田直士さんとメンバー達の物語
HIDEもTaijiもYoshikiもTOSHIもPATAもXJapanがXだった時代(1987~1991年)にお世話になった、CBSソニーの元プロデューサーだった津田直士さんが「すべての始まり~Xという青春」という本を書いていた。津田直士さんがこの本を書いたのは、XJapanが復活した時期(2009年4月)で、津田さんがプロデューサーをしていた時から20年近く経ってからだ。
なぜ、だいぶ後になってから津田さんがX JAPANの本を書いたのかというと、ある理由がある。XJapanがビジュアル系の先駆者となって活躍し、その後のLUNASEA、GLAYなどのビジュアル系のバンドに影響を与えていた。
しかし、その後はXJapanがXの時代に壁をぶち壊し、時代の先駆者となって這い上がって進んできたような元気が現代の人達になくなってしまった。そのため津田さんは、今では国内だけでなく世界にまで名前を知られるビッグバンドになったXの青春物語を書くことにした。
XJapanのメンバーはデビュー当時からロックが大好きな一途にロックスターになることを夢見た純粋な少年達であり、たった一つの夢のために多くの壁をぶち壊して、自分の葛藤と闘い、乗り越えながら進んできたということを自分の言葉で伝えたかったという話をしていた。
「すべての始まり~Xという青春」という本は、現代の若者達に”X時代の青春の物語”を知ってもらって元気を出してもらいたいという津田さんからの貴重なメッセージである。
かつて津田さんが若かりし頃にX時代にXJapanのメンバー達と過ごしてきた、まるで青春映画の様な日々の体験を今の若い人達にシェアしたかったのだろう。
(出典:YouTube)
津田直志著「すべての始まり~Xという青春~」より
P.102 (『15. メンバーと飲む』から抜粋)
「え~~。津田さん、もっと話そうよ、他の曲は?」
TAIJIがノッてきたので、他の曲も音楽的に素晴らしいところを解説し、その流れから僕がこれまでどんな音楽を聴いてきたか、そしてどんなアーティストが好きか、といった話になり、さらには優れたミュージシャンの演奏について話が及ぶと、もう僕とTAIJIのミュージシャン談義は止まらなくなった。
TAIJIの音楽的な素養とセンスがずば抜けていることに感心しながら、それでもまだまだ自分に納得していない、という彼に、ミュージシャンの先輩としてアドバイスをし、聴いてタメになるミュージシャンのプレイを紹介し、ジャンルにとらわれない姿勢の素晴らしさについて語り・・・
そうやって話しているうちに、だんだん僕とTAIJIは他人ではなくなっていった。
ふと、TAIJIとばかり話しているな・・・と思って周りを見ると、メンバーは思い思いの組み合わせで盛り上がって話している。YOSHIKIと目が合うと、TAIJIと話し込んでいた僕にYOSHIKIが笑いながら話しかけた。
「津田さん、TAIJIですよ、一番ブチキレてたの。あの、楽屋で津田さんが『あとは音楽だね』って言った後で・・・」
「ほんと?」
僕は笑いながらTAIJIを見た。TAIJIも少しうつむきながら、笑っている。
僕は心から嬉しくなって、さっきスタジオでふざけた、あれを再びTAIJIにすることにした。
黙ってTAIJIの顔を覗き込む。
それに気がつき、TAIJIが僕の目を見て笑いながら目をそむける。僕は構わず黙ってじっとTAIJIを見つめ続ける。
また頭を軽く振り、ニヤニヤしながらTAIJIが横を向く。
わざわざ姿勢を変えてさらにその顔を覗き込み、じっと見つめる。
「ちょっとぉ~、何なの~・・・」
そう呟き、照れながら困るTAIJIを見つめ続ける・・・永遠に・・・
その異様な様子を見て、TOSHIが爆笑する。HIDEも笑って見ている。
(良かった・・・大切な『音楽』が、メンバーと僕の間でちゃんとつながり始めた・・・)
僕は心の底から安心し、深い幸福感に包まれた。
そして、一緒に飲んでいるメンバーと共に闘っていく未来を少しイメージして、立ち上がると満杯のジョッキを一気に飲み干した。
Xの元プロデューサー津田直士さんから見たTaijiとToshi
1991年7月にリリースした、(Vanishing Visionから数えると)3rdアルバムである、「Jealousy」の中に収められているTaiji作曲の「VoicelessScreaming」は、Toshiが作詞した。Ⅹ時代に、Taijiの作曲でToshiが作詞の曲がいくつかある。曲作りで、TaijiとToshiのコンビはYoshikiやHIDEとは全く違う個性を放ち、カラーの違う音楽をXの楽曲に盛り込んでバリエーションを広げた。
「いつも俺たちがToshiくんにこうやって歌ってよって注文つけちゃうんだけど、この曲ではToshiくんに好きなように歌ってもらったんだ。だからToshi君らしさが出ているんだ」とコメントを遺している。この曲を作った時のToshiは声が全く出ない状態だったから、歌詞で自分の悲しい気持ちを表現した。

TaijiとToshiの言葉を交わす代わりにお互い気持ちに寄り添って共有しながら、曲作りに取り組んでいた。2人の深い絆の証が「Voiceless Screaming」だ。

津田直志さんはYouTubeで「Voiceless Screaming」のメイキングについての話をしてくれている。
(出典:YouTube)
津田さんからのメッセージ「TAIJIへ」
津田さんがⅩ時代のXJapanのプロデューサーをしていたのは、ちょうどTAIJIの在籍した時期とかぶっている。そして津田さんは自分に対してまっすぐに質問を投げかけてくるTAIJIと音楽について深く語り合い、よくコミュニケーションをとっていたらしい。
下の津田さんからTAIJIへのメッセージは、TAIJIが亡くなった後TAIJIの命日に彼を想い出しながら書いたもの。TAIJIへの親しみ、愛情が深く感じられる手紙のような文章だ。
『Innocent Eyes』 特別寄稿 「TAIJIへ」
2018-07-17
この前、痛みをこらえながら道を歩いていた時にね、突然思い出したんだよ。
TAIJIがよく、指が痛いんだよ…と呟きながらベースの練習をしていたことをね。
そうだ、TAIJIは、よくケガしてたなぁ・・・って。
たとえケガの原因が、正義心爆発のケンカや悔しくて何かを殴った結果だったとしても、あまりに辛そうだから、見ていて心が痛んでいた。それにTAIJIは右手の中指が短かったよね。
そんなハンディも含めて思い出したあの頃のTAIJIにさ、今の自分の痛みが重なったんだよね。でも、そう考えるとTAIJIは強かったな。
どんなに指が痛くても、ステージに上がったら必ず、最高にかっこいいプレイをしてたからね。
そういうTAIJI、俺はミュージシャンとして尊敬するよ。
ああ、そうだ。ミュージシャンといえば、この前俺さ、INAちゃんから聞かされてすごく驚いたよ。
TAIJIがINAちゃんに、俺のことを世界一キーボードが上手いんだ、って言ってた話・・・。
俺、TAIJIからは、聞いたことなかったよ。
だから突然聞かされてさ、何だか驚いて、嬉しくて。
泣いちゃったよ。
上手いかどうかじゃなくてね、TAIJIがそんな風に俺のことを思ってたんだ、って。
TAIJIこそ、日本が誇るミュージシャンの中のミュージシャンだよ。
そんなTAIJIになあ・・・。でも、懐かしいよな。あの頃の俺とTAIJIは、いつもミュージシャン同士として話をしてたよな。
自分達の音楽だけじゃなく、音の魅力、演奏の真髄、そして偉大なアーティストの作品・・・。
TAIJI、俺、いつでも思い出せるんだよ、TAIJIが話しかけてくる時の表情や声を。
大事な音楽の話をする時さ、ほら、おでこに少しだけシワを寄せて、何かを探すような瞳が印象的な、深い表情で。
低くて柔らかい声で、「ねえ・・・津田さんさ・・・」って話しかけてくる。
よく質問してきたよね。
素晴らしい音を響かせる方法、音楽理論、今取りかかっているオリジナル曲のアレンジについて・・・。たまにTAIJIが、誰よりも詳しいはずの、「Xのベースプレイ」について、俺に尋ねることもあったよね。
心の中で一瞬(えっ? それ俺に聞く? TAIJIが一番知ってるんじゃないの・・・?)
と呟きながらも、実際には素知らぬ顔で相談にのってみる。そうすると、実に深い相談でさ。
その度に、俺はTAIJIのミュージシャンとしての姿勢に感動してたんだよ。どんなにうまくいっていても、どんなに人気があっても、常に「本当にこのままで正しいのか?」「まだまだ新しいXはあるんじゃないか?」そう自分へ問いかける姿勢に。
現状に甘んじることなく、常にミュージシャンとしての高みを目指すその姿勢に・・・。
TAIJI、日産スタジアムの時、TOSHIと一緒に笑いながら電話をかけてきてくれて、ステージ真ん前の席を用意して招待してくれて、ありがとう。
俺、すごく嬉しかった。
TAIJIが登場した瞬間、全く新しい「今のX」に、懐かしい「あの頃のX」がダブって見えて、涙でステージが見えなくなって。大変だった。手のひらで涙を拭いながら、必死で観たよ。
TAIJIが指の痛みを堪えながら、東京ドームや、その先にある世界進出を目指していた、あの頃の夢。
その夢を、今はもう叶えられ始めていて、4月なんか、コーチェラだよ、びっくりだよな。
生では観られなかったけど、TAIJIも参加してる様子が誇らしくて。動画を観て、やっぱり泣いたよ。
本当にXは7人なんだな、って。なあ、TAIJI。
音楽って最高だよな。時を超えるもんな。
TAIJI。音楽が時を超えるんだから、いつまでもお前のことを想っていてもいいよな。
あの頃、一緒に創って刻んだ音を聴きながら、
いつまでもお前のことを想い出して、いいよな。TAIJI、懐かしいよ。
また会おうな。音楽の話
またしような。TAIJIへ
2018年7月17日
津田直士(引用:ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi/blomaga )
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